風力発電機

 1999/10/23
最近ニュース、雑誌で風力発電が取り上げられています。何を隠そう実は19年前に、私は自力で風力発電機を製作し運用していたのです。運用していたのはそれから僅か2年でしたが、今思い出すと結構面白いDIYだったと思いますのでご紹介します。
以下は当時の「風力エネルギー協会誌」に掲載された私の記事の抜粋です。協会誌は1980年12月に発行されていました。
若かりし頃のつたない記事と幼稚な図面ですがご勘弁を・・・

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はじめに
風車システムは古くから数多くの種類のものが用いられているが、大別して、水平軸風車、垂直軸風車、特殊風車の3つに分けられる。私は風力発電用としてもっとも多く用いられている水平軸プロペラ型風車を採用することにした。
理由としては、第一に効率が高いこと、つまり小型化できる。第2に市販品のプロペラが入手可能であること。本来はプロペラも自作すれば良いのですが、初めての実験であり木材から削り出すことに自信がなかったからです。そこで「ファンバード」社の1.8m型プロペラを購入し、その他の部品は自作することにした。

部品の詳細設計
昨年(1979)の11月より資料を集め設計を開始し、図面の完成したのは今年(1980)の2月であった。私は機械設計の仕事をしているため、設計、製図は苦にならなかったが次の点に特に留意した。
@風車の回転数制御が出来る構造とする
A安全性を高くする。
Bコストを極力低くする。
また、本誌通巻5号の名倉氏製作の風力発電システムの写真1、2を参考にさせていただいた。
次にこの風車の概要であるが、エネルギーの流れは、風→プロペラ→ローターシャフト→大プーリー→ベルト→小プーリー→ジェネレーター→バッテリー であり付属部品として、上方スウイング機構、上方スウィグ時のショック吸収用ダンパー
ジャイロモーメント吸収用ダンバー、ディスクブレーキ、支持架台、風圧スイッチに分れる。設計出力は8.5m/sで200Wである。

1.口一夕一シャフト
ローターシャフトはフロップの回転を滑らかにプーリーに伝達し、フロップを支えるものである。軸径はΦ25とし材質はSUS304のミガキ丸棒を使用した。軸受はピロープロックUCP−205の2点支持とした。軸には風車のスラストが加わるが、
ラジアル軸受けで吸収できる程度のスラストであるので特にスラスト軸受は使用しなかった。しかしここで忘れてならないのはシャフトに段を付けて、スラストによりシャフトとベアリングの内輪がすべらないようにすることである。
フロップとシャフトの結合はフロップ中央の4つの穴を利用し、プーリーに取付けたフランジともう一枚のフリーフランジで、フロップを挟みネジで取付けた。またプーリーとシャフトの結合はキー溝を使用しM8×10Lの六角穴付止メネジにより固定することにした。

2.増速機構
風力発電の構成要素のもっとも重要なものの一つであるジェネレーターには、手軽に入手しやすく、また価格も安い自動車用のオルタネーターを使用することにし、近所のボンコツ屋で中古のオルタネーターを入手した。このジェネレーターは、出力14V、45Aであり3500rpmで定格出力に達する。
そこでフロップ回転数を定風速10m/sで900rpmとして増速比を約4倍とした。増速機構としては、ギヤ、Xベルト、タイミングベルト、など数々あるが私はベルトのやわらかいウレタンの丸コードを採用した。各種の風力発電の入門書では”延び””滑り”の少ないタイミングベルト又ギヤーを推奨しているが、
起動トルクの小さい2m前後の風車には、低価格でありベルトの長さを自由にできるウレタンコードが最適であると考えられる。

3.フレーム
風車のフレームは最初150×75×2tのSUS304角パイプを考えていたが、これは高価であり、1m、2mなどと切り売りしてくれないので将来はこのパイプを利用できるように寸法をこれに合わせた木材(檜)を使用することにした。木材は我々アマチュアにとって、入手しやすく、また加工性も良く、強度、比重共に風車の材料として適しており、短期(2〜3年)の実験には最良である。

4.ユニット支持架台
架台は2inch SUS304TPを使用し、風向変化の追従性を向上させるため、スラストベアリングを組み込んだ。小型風車の場合は不要であると思われるが信頼性を高めるため敢えて使用した。タワーヘの取付はベアリングボックス上部の3inchlOk フランジを利用してアングルを組み合わせたタワーヘボルトで取付けようと考えていたが、タワーの製作、基礎工事が困難であるので、
中古の電柱を知人の電気工事会社よりゆずり受け、これの最上部に特製のUボルト2本によりベアリングボックスを固定した。取付けに当ってはユニットの垂直度を正確にすることが大切である。これが正確でないと追従性が悪くなる。

5.安全装置
我々アマチュアが住宅の近くへ風車を設置するためには万全の安全対策が必要である。一般的ではあるが本システムにも次のような安全対策が講じてある。
(1)回転数制御
自然風の風速はたえず変化しており、風速が定格をオーバーするとフロップは過回転となり強度上危険となり最悪の場合システムの破壊につながる。これを防止するために回転数制御が必要となる。
本システムでは山田式風車などで使用されている上方スウイング方式を採用し、スウイング時の振動を吸収するために自動車のショックアブソーバを改造したオイルダンバーを取付た。また台風時などに完全に風車を停止させるため、大プーリーの裏にアルミディスクを取付け、これにゴム片を押付ける手動ディスクブレーキを付けた。
(2)ジャイロモーメント吸収用ダンバー
水平軸型風車には必ず必要な装置であり本システムでは、構造が極めて簡単である尾翼折れ曲がり方式のダンバーを使用した。スプリングの取付け方式はスマートであり、強さも調整できる様になっている。

6.電気配線
ジェネレーターの配線は前号の須田氏のものと、基本は同じであるが次の2点が改善されている。
(1)風圧スイッチ
ジェネレーターには発電をするために励磁電流が必要であり、風車システムでは風が吹き出したらこれがONとなり、弱風になるとOFFとする必要がある。この装置には、風圧によりマイクロスイッチを作動させる風圧スイッチを使用した。マイクロスイッチは直流用の磁気吹消型が有効であり、またこの型は価格も安い(1000円前後)のでその他いくつかの装置の中では一番実用的である。
(2)励磁電流の制御
レギュレーターをメーカー指定の配線すると、フィールドコイルに約2.5Aの電流が流れ回転トルクは大となる。このために風速の回転上昇が困難となるので、励磁電流を風の強さにより上・下させなければならない。しかし連続的に変化させる必要はなく、強風と弱風の2段階切換で十分である。本システムではフィールドコイルにホーロ巻線型抵抗10オームと5オームを接続し手動で切換えるようにした。

7.その他力バー類
本体のほとんどはSUS304製なので塗装の必要はないがフレームは木材であるので、エポキシ系の塗料を2度重ね塗りした。カバーはローターシャフトのピロー部とジェネレーターにアルミ製の雨よけカバーを取付けた。通気孔が必要である。(SUSを使ったのは過剰装備である。)

運転状況
今年(1980)3月に完成し約2週間ジェネレーターを接続しないでフロップだけでならし運転を行ない、上方スウイングのウェイト調整、ショックアブソーバーのノズル径の調整を行なった。3月15日待望の発電開始となりその後約6ケ月間順調に運転している。
さて、この風車の性能であるが、初めに書いたように約8.5m/sで、200Wの設計となっている。しかし実際に定風速で8〜9m/sという強風の日はなく、200Wの出力は記録していない。実際に発電した出力は7m/sで約160Wの出力が最高である。またカットイン風速は5m/s前後でありカットアウト風速は10〜12m/sに設定している。正確な特性は解らないが5m/s以上の風が吹けば、風エネルギーをキャッチして電気として利用できるということである。
風車を製作すると共に重要なことは、充電されたエネルギーの用途である。通常バッテリー・・・・ここまでで以下省略します。
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更に問題点等が書かれていますが、ここでは省略します。その後フロップの回転数を検出して、励磁電流を制御するように改造したと記憶しています。
製作してから2年後に引越しがあり、発電機を取り外し実家の倉庫に格納したまでは記憶しているのですが・・・
おそらく組み立てれば使える状態と思いますので、機会があれば再度チャレンジしたいと思ってます。
A-4に縮小した図面(gifに変換してます)を掲載してますので、興味のある方は覗いてください。また、正式図面が欲しい方はmail下さい。A-2サイズのコピーをお送りします。


全体図 部分1 部分2 部分3 部分4 電気1 部分5