1999/08/8

◆carrying capacity(キャリング・キャパシティー)直訳すると「積載量」です。
一般的には森林や土地などに人手が加わっても、その生態系が安定した状態で継続できる人間活動の上限のことを云います。
世界の耕地の大部分で、carrying capacityを越えた農業が行われているという国連教育科学文化機関(UNESCO)による報告があり、砂漠化が起こるのはcarrying capacityを上回る開発が行われた結果ともいわれ、途上国ばかりでなく、先進国においても重要な問題となってきています。

◆ここで砂漠化について考えてみましょう。
国連砂漠化防止条約において砂漠化の定義は、「砂漠化とは乾燥、半乾燥及び乾燥半湿潤における種々の要素(気候変動及び人間の活動を含む。)に起因する土地の劣化」と定義されています。 要するに、気候的要因或いは人為的要因により不毛の地と化す事です。気候的要因とは、地球的規模の大気変動により降雨量が極端に減少し乾燥地帯になることであり、人為的要因とは、前述したcarrying capacityを上回る開発、つまり脆弱な生態系における、環境容量を越えた過放牧、過伐採、不適切な灌漑等の人間活動を指しています。

◆途上国の農業開発を例にとりますと、
1.先進国から農業開発(コーヒー、小麦等)のいい話しが舞い込んでくる。
2.外貨を獲得し豊かな暮らしをする為に、広大な土地を耕し作物を作る。
3.裕福になると共に、人口が増加する(爆発的に増える)。養うために森林(原生林)を伐採し農地に転用する。
4.農業機械・化学肥料・農薬の購入のため、連作と農薬漬けの農業となり肥えていた土地が痩せていく。
5.灌漑用に大量の地下水を汲み揚げたり、河川をせき止めたりした為に農業用水は枯渇し、
 さらに土地の塩分濃度が上昇し農業が出来ない不毛の地となる。
6.食料不足となり難民が増える。各地で紛争が起こる。

◆先進国の食料を補うための開発が、自国の首を締めることになろうとは誰も想像していなかったでしょう。
しかし現実には、私が中学生のころ学んだ世界の農業国の華やかさは今はありません。
国連環境計画(UNEP)によると、砂漠化によって毎年、九州と四国の合計に相当する600万ヘクタールもの土地がほとんど回復不能なまでに荒廃しているようです。
世界の人口が増え続ける中で、農地の増加はほぼ頭打ちのため、生産性の増大を図るのは重要なことです。自然に優しい技術革新を期待したいものです・・

◆海部川のここ2〜3年の状況はまさしくこの図式に当てはまるような気がしませんか?。急激な開発(道路工事)により中・下流域はほとんど埋まってしまい、数年前の清流が今では昔話のようです。
流域で暮らしている方の事を考えると開発は止む得ないと思いますが、自然治癒力を残しながら優しく工事してほしいものです。
開発と環境は両立しなければなりません。絶対反対ではなく、ゆるやかに流れを変えるのがいいと思いませんか?


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