1998/11/01

◆石鹸の成分
 動植物油脂(菜種油など)と水酸化ナトリウム( NaOH )を混ぜたものを加熱すると、油とアルカリが反応してせっけん(脂肪酸ナトリウム)とグリセリンができます。
これが「石鹸」です。また、NaOHの代わりに水酸化カリウム( KOH )を使うと、カリせっけんになりますよ。
せっけんの生産方法には「けん化法」と「中和法」があります。「けん化法」は釜に油を入れ4 〜5日間炊く方法で、自然な形でグリセリンが溶け込みマイルドでしっかりした石鹸ができるようです。地域の主婦がやっているのはこの方法です。
中和法では油脂を脂肪酸とグリセリンにあらかじめ分け、脂肪酸だけをアルカリで中和してせっけんをつくります。そのためグリセリンをあとで添加します。この方法の場合は3〜 4時間ほどでせっけんができあがります。工場の大量生産は、この方法です。

◆私たちは白い固体の石鹸のことを単に「せっけん」と呼んでいますが、本来「せっけん」とは、脂肪酸ナトリウムと脂肪酸カリウムのことを指します。
脂肪酸ナトリウムと脂肪酸カリウム 95% 以上で、香料や色素や品質安定剤を含んでいないものを「無添加せっけん」といいます。無添加せっけんは、洗顔、洗髪、入浴、食器洗い、洗濯、などどんなことにも使えますよ。

◆汚れを落とすのは界面活性剤  水と油を混ぜ合わせる働きを持つ物質を界面活性剤といいます。界面活性剤の分子(界面活性分子)はその一端(親油基)が油に、もう一方の端(親水基)が水に馴染む性質を持っています。そのため、無数の界面活性分子の一端である親油基が油などの汚れを包み込むように取り巻くと、取り巻かれた汚れの外側は親水基で覆われるため、汚れは水に引っ張りだされます。これが、界面活性剤の洗浄作用です。
家庭用品品質表示法では、洗浄用の界面活性剤の中で、脂肪酸ナトリウムと脂肪酸カリウムを「石鹸」と呼び、それ以外のものを「合成界面活性剤」と呼びます。

 ・合成界面活性剤
  一般に、合成界面活性剤は pH に関係なく界面活性を示します。弱酸性の生体膜上でも界面活性を示すため
  生体膜を容易に透過したり、破壊したりします。
  また、合成界面活性剤は、ジブチルヒドロキシトルエン ( BHT ) などの脂溶性の有害化学物質の経皮吸収を
  著しく促進する働きも持っています。
  そのため、皮膚疾患やアレルギー、ガンの促進因子として働く可能性もあるのです。

 ・石鹸の界面活性剤
  「石鹸」はアルカリ性領域でのみ界面活性を示すため、中性の河川水中や弱酸性の生体膜上では
  すでに界面活性を失っています。
  そのため、経皮吸収もされず、河川水中の分解者である微生物の機能にも悪影響を与えません。
  更に「石鹸」の良いところは、 1日で水と二酸化炭素に全部分解され、残ったせっけんカスは
  微生物の栄養源となり生態系にリサイクルされます。

◆本当の石鹸
店頭にある品名は、
 ・洗濯用(台所用)せっけん
 ・洗濯用(台所用)複合せっけん
 ・洗濯用(台所用)合成洗剤
の 3種類です。「洗濯用せっけん」、「台所用せっけん」と表示してあれば本物の「石鹸」です。
「植物から生まれた洗剤」のように宣伝しているものは要注意。
動植物性油脂からも合成界面活性剤を製造することができますので、ラベルの成分をチェックしましょうね。

◆石鹸の弱点
溶けにくいんだよね。20℃以上の水温はほしいですね、でも給湯機で合成洗剤を使っているのならOKだ。
また、洗濯で使うと衣類が黄ばむと云われていますが、基本的には黄ばみません。
元の色に戻っただけなのです。白い衣料繊維製品のほとんどは蛍光増白剤で白く染め上げられています。
合成洗剤で洗濯すると白くなるのは、中に入っている蛍光増白剤が更に白く染めているのです。
石鹸で黄色くなるのは、蛍光増白剤が落ちているだけなのですよ。
客観的に見ると「石鹸」がやや不便そうだ。

◆前述したように、合成洗剤は弱酸性の生体膜上でも界面活性を示すため川に流れ込むとまずプランクトンや川虫が界面活性剤の餌食になるのです。
アメゴは川虫を鮎はコケを好みます。食事の出来ない川には魚だって近づきませんよね。


[Home]