ウッドターニング作品 その84

2020/7/12
果汁搾り器

スダチの季節になると、味噌汁、焼き魚に始まり何にでもスダチを絞ってかけるのが徳島だ。ネットで搾り器を探していたら木製のが見つかったが、販売は終了していたので写真を頼りに図面を描いて自作することにした。図面
1.材料は10年以上も前に友人からもらった、屋久杉を使うことにした。小さいブロックなので木取りに工夫がいりそうだ。
2.先ずは本体と脚に使う部分に3分割。
3.本体は曲線が多いので、図面を原寸でプリントアウトして剥がせるスプレー糊で接着。
4.バンドソーでカットした状態。
5.自作のスピンドルサンダーで切断面を図面通りに研削。
6.本体と蓋に分ける位置を自作鉛筆トースカンでマーキング。
7.テーブルソーで切断すると刃幅分だけロスるので、手鋸でトロトロと切断した。
8.ドラムサンダーで切断面を研削。
9.脚の部分はどうしても材料が足りないので、継はぎになってしまった。ボンドは耐水性を持たせるために、イエローを使っている。
10.部品3個が出来上がった。
11.スクリューチャックを取り付けるための下穴7mm。貫通しないように深さは15mmとした。
12.スクリューチャックのネジ部が長く、ターニングしていくとネジが出てしまうので、チャックとワークの間にスペーサーを挟むことにした。スペーサーは50mm角で厚さ6mm。穴は8oだ。
13.スクリューチャックにワークを捻じ込んだ状態。
14.コンパスで旋削箇所をマーキング。
15.さぁ、これからターニングだ。
16.偏心しているので、回転数は600rpmくらいが限界だ。
17.ターニング完了。中央にはドリル穴の先端が少し覗いている。
18.果汁を排出するSUSパイプが入る12mmの穴あけ。穴をあける前に寸法チェックをしなかった事を、後で後悔することになるのだが…。
19.蓋の部分はバキュームチャックを使ってでターニングした。
20.回転数を下げて慎重に作業し、無事ターニング完了。この凹みには硬い材料で作った押え板を入る予定だ。
21.ここで本体の寸法チェックをしていて間違いに気が付いた。直径60mmの座グリ部分が50mmになっていたのだ。貫通穴は12mmになっているので、もうスクリューチャックは使えない。で、苦肉の策としてM12のボルトで本体を締め付けて、3ツ爪チャックで把持することにした。
22.これで無事に座グリを60mmまで拡張できた。ホット一息だ。
23.本体の果汁が流れる溝加工だが、複雑で罫書くのが面倒なのでレーザーマシンで厚紙を切抜いて、テンプレートを作った。これは内径80mmの溝用だ。
テンプレート
24.これは内側60mm部分のテンプレートだ。中央の穴は位置決め用に使うためのものだ。
25.内側溝のマーキング。
26.外側溝のマーキング。
27.溝はノミと彫刻刀で彫り込んだ。
28.脚-1が入るアリ溝切り。センターに溝が切れるように、角材をハタガネで固定して加工した。
29.ビットは刃径12mm、シャンク6mmを使った。
30.脚-2が入るアリ溝切り。
31.脚-2のほぞ加工。
32.脚-1のほぞ加工。
33.ギンナンビットで蓋の全周を面取り加工。テーブルにはスタートピンをセットして、切り初めのキックバックを防止している。
34.ノブを取り付ける15mmの穴あけ加工。
35.蓋の内側に張り付ける押え板は鉄刀木で作った。先ずは直径50mmにターニング。
36.厚さ16mmで突っ切り。
37.裏返して、逃がし部の加工。
38.同じ材料でノブも作った。鉄刀木はポロポロと剥がれるので、表面が荒れないように少しづつ削り込んでいくのがポイントだ。
39.果汁取り出し用のSUSのパイプを作る前に、木製のVブロックを作ることにした。手持ちの鋳物製ではドリルが貫通した時に、ドリルがVブロックに干渉して刃先を痛めてしまうためだ。先ずは6mmビットでブロック中央の逃がし部分を加工。
40.次に留め切り治具を使って、逃がし部から45°でカット。
41.反対側のパーツも同様にカット。
42.二つのパーツを中央で接着するとVブロックらしくなった。
43.接着だけでは強度不足で割れてしまう惧れがあるので、8mmの丸棒を2本で補強することにした。先ずは8mmのドリルで接着面+20mmの深さまで穴をあけた。
44.次にボンドを塗った丸棒を叩き込むが、躊躇すると途中で止まってしまうので、一気に叩き込まないといけない。
45.サンディングして完成だ。
46.いよいよ最後のパーツ果汁を取り出すSUSのパイプ作りだ。直径12mmのミガキ丸棒を木工旋盤で咥えて、穴あけ部と切断部にマーキング。旋盤のインデックスプレートを使って、90度位置にもマークをすると正確な十字で穴あけが出来る。
47.5.5mmの穴をあける予定だが、先ずは3mmの下穴をあけた。後で考えると、この時に5.5mmで穴をあけた方が良かったかなとも思う。
48.長さ約47mmにカット。
49.先端部をドリルと同じ118度になるように、ベルトサンダーで研磨。最終は#240で仕上げた。
50.旋盤に掴みサンディングすると鏡面になってくる。
51.反対側にセンタードリルで、ドリルの位置決め加工。
52.6mmの穴あけ。
53.木製のVブロックに乗せて、5.5mmの穴あけ加工。
54.もう一度チャッキングして9mmの穴あけ。
55.#240の布ヤスリで研磨仕上げ。
56.果汁取り出し用のSUSパイプ完成だ。先端を砲弾状にしたかったので、敢えてややこしい作り方を選択してしまったのだが、市販の内径10mmのパイプを使っても問題はないだろう。
57.本体と蓋の丁番取り付け部は、丁番の軸部が当たらないように面取りをした。
58.丁番用のドリルで下穴加工。
59.専用のドリルを使うと、ズレることなく丁番を取り付けられる。
60.蓋には果物のイラストをレーザーマシンで刻印した(ベクター加工)。ベクター加工は初めてだが、まるで印刷のように綺麗に刻印ができた。後ほど動画を見てほしい。
61.丁番を取り外し、ノブ、押え板を接着してから、木固めエースで防水加工した。
62.SUSパイプは2液性のエポキシ接着剤で本体に接着した。
63.果汁はこのパイプ穴を通じて下に落ちていく。
64.ついでに果汁を受けるポットも作ることにした。材料は鉄刀木の端材だ。
65.ポットの皿の部分は、何十年か前に磯釣りの「撒き餌杓」を作った時の円錐カップを使うことにした。厚さが1mmあるので、ダイヤモンドカッターでも少しづつしか切ることが出来ない。
66.なんとか高さを低くすることが出来た。
67.台の部分を仕上げセメダインスーパーX2を塗って、テールストックで押し付け接着した。
68.サンディングすると鏡面になってきた。
69.いい感じに仕上がったかな。
70.スダチ2〜3個分の果汁が入りそうだ。
丁番で本体と蓋を繋いで完成だ。
蓋を開けた状態。
果汁の出口。